アイラブ桐生 第一章
とりあえず、電車と地下鉄を乗り継いで
帰り足の始発駅となる、東武線・浅草駅まで戻ることにしました。
下りロマンスカーの時刻表を見上げていたら、
横から顔を出したレイコが、またポツンと耳元でささやきます。
「ゆっくりでいいわよ、
二人で、少し浅草を歩こうよ。
めったにない機会だもの、
最終のロマンスカーで帰ろう。」
また至近距離に近づいてきたレイコの、
甘い化粧の香りに(少しだけ)ドギマギとしながらも、
え、12時前だぜ、まだ、と応じると、
「そんなに私と居るのが嫌なの?
わかりました。
あなただけ、さっさと帰ってちょうだい。」
と今度は、きっちりとふくれてしまいました。
最終のロマンスカーでも、
浅草駅からの出発は、午後の8時台でした。
そこから2時間がかかったとしても、桐生には10時頃には戻れます。
まぁ、たまにはいいか・・・
そう思って、最終でふたつ並んだ座席の切符を買いました。
それを一枚手渡そうとすると、即座にレイコが目で拒絶をします。
持っていろってか・・・
作品名:アイラブ桐生 第一章 作家名:落合順平