アイラブ桐生 第一章
「使えょ」
と、ハンカチを手渡しました。
「持ってはいるけど・・」と受け取り、
それをそのまま綺麗に畳み直してから、自分のポケットへしまいこみました。
どうするのかなと、不思議に思って見ていると、
バッグから、花がらの自分のハンカチを取り出しました。
じゃあ、どうするのと尋ねると
「あなたから、初めてもらったプレゼントだもの、
大事に、とっておく。」
下を向いたまま小さな声で答えました。
「そうじゃぁなくてさぁ・・・
ハンカチのことじゃなくて。
どこへ行きたいのか、希望の場所があれば
それを考えて言ってください、
と、いう意味です。」
あ~、なんだそうかと、
目をくりくりさせてペロッと舌をだしました。
「まかせる。」と言い捨ててから、あとは地下鉄のまっ暗な窓へ
視線を向けてしまいました。
まったく、もう、
いつでもこういう奴なんだ、こいつは。
・・・そう思いながらも、
あまりにも残りすぎた時間を、もてあましている自分がいることに、
こちらも、初めて気がつきました。
作品名:アイラブ桐生 第一章 作家名:落合順平