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アイラブ桐生 序章・はじめに

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 「桐生,着道楽、男のおしゃれ」と
うたわれたほど、機屋(はたや)の旦那衆は
着飾り、かつよく遊びました。
地元の名士や旦那衆が、芸妓たちをはべらかせて
華やかに遊んだというのが、北関東いちと言われた、
ここ桐生の花街でした。

 それが「仲町通り」と呼ばれた歓楽街のことです。
飲み屋さんが密集をしている、この小路の入口には、
事業に成功して、地位と名声を勝ち取った地元経済界の男たちの社交の場、
「桐生倶楽部」の建物がデンと、構えています。


 ここは、れっきとしたロータリークラブの拠点です。
名門や商工業のそうそうたるメンバーがたちが、
夜毎に集い合うという社交の場です。
飲み屋街にはまったくもって不釣り合いとも言える、赤レンガの西洋式で
地中海リゾートの雰囲気さえも漂わせる、実に洒落た建物でした。
それがなにゆえに、歓楽街の入口などに立っているのでしょうか・・・


 実は、それこそが桐生という町なのです。




 この街の持っている古い歴史と、長年続いた機織りの音は
そのまま、私を育ててくれた故郷の「ゆりかご」でした。

 しかし1970年代に入ってからは、経済の発展と共に
多彩な文化が花開き始め、また学生運動や安保闘争などの時代の波が
静かだった北関東の地方都市にも押し寄せてきました。

 平穏に暮らしてきた若者たちの間にも、これらの時代の波は
静かに浸透をしながら、徐々にその余波を
ひろげはじめました。

 戦争を知らない世代が、
安保闘争に立ちあがり始めました。
政治の深淵をよく理解しないままに、若者たちが熱病のように
首都・東京へ連日、抗議のデモ行進に押しかけました。

 そんな時代を背景に、
私のホロ苦い青春の「放浪」が始まりました。
最初のやんちゃは、「家出」です。
しかしそこへ至るまでには、まず初恋の話から始めたいと思います。
私にとっての永遠の存在、レイコがそこに居るからです。