理沙と武志
3ばん
教室に到着した武志はやっと理沙と離れて多少落ち着いていた。しかしそれも長くは続かない。
「よう、バカップルの片割れ」
教室に足を踏み入れた瞬間に、良助が大声で声をかけてきた。クラス中の視線が一気に武志に集まった。いつものことなので、武志は別に気にすることもなく自分の席に向かった。クラスメート達の反応もそんなものだった。
「お前等のバカップルっぷりも完璧に飽きられたらしいな」
「入学した時からだからな。普通の奴は飽きてどうでもよくなってるだろ。普通の奴ならな」
「おいおい、まるで俺が普通じゃないみたいじゃないかよ」
「鏡見ろ」
良助が反論しようとしたところで、田島が教室に入ってきた。
「おはよう。全員揃ってるか?」田島は教室をざっと見回した。「いるみたいだな。それじゃ、今日は珍しく話がある」
教室が少しざわめいた。いつもなら田島はすでに教室を出て行っているはずだった。
「おいおい、少し静かにして話を聞け。昨日のことなんだが、どうも校内に怪しい奴が侵入したらしい」
良助が勢いよく立ち上がった。
「それは変態ですか? それとも泥棒ですか?」
「わからん。まあ、注意しとけよ。はっきりするまで、5時以降学校に居残るのは禁止だ。以上!」
田島はさっさと教室を出て行った。教室は雑然と雰囲気になった。しかし、武志と良助は特に騒ぐこともなかった。
「けっこう深刻な問題だと思わないか、武志君」
「そうだな。影響を受けそうな奴も多いな」
「まあ、俺やお前みたいに同好会とか部活に適当に参加してるぶんには関係ないな。普通にしてりゃ」
「何かたくらんでんじゃないか?」
「まさか。間違っても変態だか泥棒だかの顔を確かめてやろうかとか、そんなことは微塵も思ってないぜ」
「自重しろよ」