小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

理沙と武志

INDEX|3ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

2ばん


 2人は校門前に到着した。武志は組んでいる腕を外そうとしたが、理沙はそれを許さず、武志をグイグイ引っ張っていった。校門には、武志の担任の田島弘之が本を読みながら適当に突っ立っていた。それでも、生徒が通ると顔を上げずにおはようと声をかけていた。
「おはよう。お前ら、今日も仲がいいな」
 相変わらず顔は上げなかったが、武志と理沙には一言多かった。
「そう見えます?」
 理沙は嬉しそうに、よりいっそう腕を絡ませて武志に密着した。
「幸せそうで何よりだ。ほら、さっさと教室に行った行った」
 武志はいい加減、理沙から放れるのはあきらめたらしく、黙って理沙とぴったりとくっついたまま校舎に向かった。
「ねえ、あの先生ってさ、いつもああやって本読んでて顔上げないけど、誰が通るかちゃんとみてるんだ」
「目立ちすぎれば目に入るんじゃないか」
「全部あいさつしてたじゃん。それに」理沙は武志の顔に組んでないほうの手をそえて、自分のほうに顔を向けさせた。「こんなことすれば嫌でも目に入るだろうけどね」
 理沙は目をつぶって、ゆっくりと自分の顔を武志に近づけていった。武志もなんとなくそれに応えていいムードになったが、それはいきなりグッと引き離された。
「おはよう、お2人さん」
 武志と理沙が振り返ると、2人の肩に手をかけた、武志のクラスメートの荒川良助が眠そうな顔をして立っていた。
「ああ、おはよう」
「早く行こうぜ、学生の本分は勉強らしいからな」
 良助は2人の肩を2回叩いてから、背中に手を添えて押し出した。武志はよろめいたが、理沙がすぐにその体を支えた。そして、良助にたいしてすぐに振り返って口を開いた。
「ちょっと、恋人の甘い時間を邪魔しないでもらいたいんだけど」
 良助は2人を追い抜いてから、面倒くさそうに手を振った。
「それはどうも。俺は消えるから後は思う存分やってくれ」
 良助は去っていったが、残された2人はさっきまでのムードを維持することはできなかった。武志はとりあえず腕を組んだまま理沙を引っ張っていった。
「邪魔者ばっかりで参っちゃうよねえ、まあそれがいいと言えばそうだけど」
 理沙はぶつくさ愚痴っていた。

作品名:理沙と武志 作家名:bunz0u