理沙と武志
12ばん
理沙と武志2人になっても、夜の学校の不気味な雰囲気は関係ないようだった。しかし、一応理沙は武志の腕に自分の腕を絡ませて、ぴったりと体をくっつけていた。
「歩きにくい」
そう言った武志に、理沙はわざとらしい困った表情をうかべた。
「でもさ、たしかに不審者ってのが出てきたらこれだと困るかもね」
「そうだな。だからその腕を放せよ」
「はい」
理沙はパッと絡めていた腕を放した。変わりに武志の腰に腕をまわした。さっきよりもさらに体が密着した。
「いや、これじゃ駄目だろ」
「どうして? 手は自由になったでしょ。それであたしを守ってよー」
理沙はますます強く、武志の腰にまわした腕を締め上げた。武志は理沙の肩に腕をまわしてぎゅっと抱き寄せた。
「わかったよ。それより、どこを見てまわる?」
「とりあえず上から順番に見ていけばいいんじゃない」
「そうだな、安全そうだし、そうするか」
「いやー、保守的ー」
理沙はそう言って笑った。
いっぽうそのころ、良助とさおりは武志達とは逆に、1階からまわることにしていた。
「武志の野郎はたぶん上からまわるだろうから、俺達は下から行こう。そのほうが不審者に会う可能性も高くなるからな、たぶん」
武志はそう言ってさおりを説得したようだった。2人は気楽な様子でお菓子をぱくつきながらゆっくりと歩いていた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「良助くんと武志くんは、ここに入ってから知り合ったんだっけ?」
「ああ、そのわりには親しそうだろ」
「ほんと、そうだねー。もうびっくり」
まったりとした雰囲気だった。