理沙と武志
11ばん
夜の校舎は不気味な雰囲気が充満していた。しかし、廊下を歩く4人にはそんなものは関係ないらしかった。
「お前さ、ポテトとか食うなよ」
「何でだよ」
武志に注意された良助は、不思議そうにその顔を見ながらポテトチップスを口に放り込んだ。さおりもその袋に手をつっこみながら不思議そうな顔をした。
「そうそう、前田君、どうしたの?」
理沙も武志の顔を面白そうに見ながらポテトの袋に手を伸ばした。
「別にさあ、すでに不法侵入してんだから、今更そんな硬いこと言うことないじゃない、武志君」
理沙の言葉に、武志はイラっとしたが、すぐにあきらめの表情になった。
「勝手にしろ」
しかし、そう言った武志の前に、ポテトの袋が差し出された。武志は思わず手が伸びた。
「そうそう、それでいいんだよ」良助は満面の笑みでうなずきながら、自分もポテトを口に放り込んだ。「しかしなあ、どうもあんま怪しい雰囲気がないな」
「そうかな? 不気味な雰囲気はかなりあると思うけど」
微塵も不気味じゃなさそうな様子でさおりは首をひねった。
「いやなあ、確かに不気味かもしれないけど、犯罪の臭いはしない感じだろ?」
「犯罪の臭いってのはよくわからないけど、確かにそうかもね。静かだし」
理沙は良助の言葉に納得したように言ったが、武志はその理沙の言葉に首を横に振った。
「騒々しい空き巣がいるかよ」
「わかってないなお前は」良助はわざとらしいためいきをついた。「よく訓練された空き巣はな、騒々しくしても大丈夫なところを選ぶんだよ」
「お前空き巣に入ったことあるのかよ」
「甘いな」チッチッチと、舌を鳴らしながら良助は人差し指を振った。「それくらいは常識だぜ、武志君」
「ああ、そうか。お前の常識はよくわかったよ」
武志はそう言って足を速めた。理沙がその腕をつかまえて一緒にどんどん先に進んでいった。
「それじゃ、2階で落ち合いましょうか。ちょうど中間」
「そうだな、せいぜいいちゃいちゃしろよバカップルども」良助はヘッドランプを点滅させて2人を見送ってからつぶやいた。「あいつらお熱いね」
その言葉に、さおりは大きくうなずいた。
「じゃましないようにゆっくり行ったほうがいいね」