理沙と武志
10ばん
その夜、例の3人に加えて、なぜかさおりまで校門の前にいた。武志は相変わらず機嫌が悪そうだった。
「なんで俺はここに来てるんだろうな?」
良助と理沙はあきれた表情を浮かべて首を振った。
「お前さ、今ここに来てるのにそれはないだろ」
「そうそう、ママのおっぱいでもしゃぶってればよかったんじゃない?」
そう言いながら、理沙は武志の脇腹を肘で突っついた。武志はその肘をつかんで、理沙をぐっと自分の方に引き寄せ、その顔を自分に向けさせた。
「俺はな、お前らが勝手なことをやらないようにするために来たんだ」
武志は厳しい顔でそう言ったが、理沙はそれを気にせず、その腰に腕をまわした。
「そう、守ってくれるのね」
「違う。でもな、何かあれば、そうするつもりだ」
さおりはそのやりとりをうっとりと見ていた。
「やっぱ本物は違うわあ」
「いちゃつくのはそのくらいにしとけよバカップル」
良助はそう言ってから、昨日の放課後に武志に見せたグローブを着けて、カメラを取り出した。
「そろそろ行くぜ」
にやりと笑って校門を乗り越えた。後の3人もそれに続いた。
夜の学校は当然ながら静かで、なんとなく不気味な雰囲気があった。明かりは良助のヘッドランプと武志の持ってきた懐中電灯だけだった。
正面玄関の前まで到着すると、良助はポケットからなにかの道具を取り出して、あっさりとピッキングで鍵を開けた。
「すっごーい」
さおりが感心して良助の手元を覗き込もうとしたが、その道具はすぐにしまわれてしまった。
「おっと、こいつは一般人には見せられないな」良助はにやりと笑った。「俺の秘密の七つ道具だ」
「そんなもん鍵屋なら普通に持ってるだろ」
武志のつっこみにも良助はまったく動じる様子はなかった。
「鍵屋ならな。でも俺は違う」
「あー、はいはい」
理沙が3人の間に割って入って、ドアを勢いよく開けた。
「大事なのは中に入ること。どう入るかは、どうでもいいでしょ」