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第四章三話 再出発の朝

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その夜、雷太は石賀さんの家へと行った。
「石叔父さん・・・」
「雷太か。おいで。」
パフッと抱きついた。
「心配か?」
「うん・・・・だって兄ちゃんだから。」
「・・・ねぇ、石叔父さん・・・・僕達と村人どっちが大事?」
「えっ。それはどっちも」
「どっちかじゃないと駄目!」
「・・・・・」
「だって石叔父さんは大日本帝国の一員なんだよ!敵国か味方かわからないような国なのに・・・・どうしてそんな奴らの・・・グスッ」
石賀さんは泣いている雷太をなだめるように背中をさすった。
「いいかい、雷太。よくお聞き。この地球上にいる人間は全て平等なんだ。誰しもが同じ位置に立っている。」
「・・・・」
「それは国も、国境も、白人も黒人も黄色人種も大人も子供も男も女も関係ないんだ。
そもそも・・・・戦争が起きたこと事態が間違いなんだ。」
すると雷太は飛び起きるように前を見るなり
「違う!白人も黒人も敵だ!」
「そしたら君たちのお友達の外国兵さんも敵になるんだよ。」
「そっそれは違う。イタリアとドイツは同じ枢軸だから」
「そう、枢軸だからという違いだけで例外扱いにする。」
「石叔父さんは何が言いたいのさ!!」
石賀さんは真剣な目をして
「この地球上に住んでいる人間は誰一人として他人の人生を奪う権利が無いということだ」
その言葉を聞いて雷太は黙った。
「俺は医者として日本とこのフィリピンで色んな経験を重ねた。
その時に気付いたんだ。
日本だからとか外国人だからとか何が違うんだろうって。
今その場で苦しんでいるのは人種を超えて同じ人間だということに気付いたんだ。
同じ薬を与えれば治る。
同じように看病していたら安心してくれた。
一体何が違うんだろうと思ったら世界が違って見えるようになったんだ。」
「世界が違って・・・・見える・・・・」
「あぁ。雷太にもいつかわかるよ・・・・こんな醜い戦争が終わって、この言葉を思い出したら見つめてみるといい。」
「・・・・・・うん。」
「さぁ、準備があるだろ。」
「叔父さん!!」
「なに?」
「・・・・・今日だけ・・・今日だけ、兵士の僕じゃなくて二之前雷太としての僕を見てお願い聞いてくれる?」
「あぁ。お前の叔父さんとして聞こう。」
そして雷太と石賀さんは朝まで一緒の布団で寝た。
雷太の顔はとても安らかで嬉しそうな顔だった。
そんな顔を見つめながら石賀さんは思った。
[どうしてこんな若い子供が戦場に来なければいけなかったのか。まだ、親に甘えたい年頃なのに・・・
はやく戦争が終わってくれれば。この子達もきっとまた毎日が楽しいってことに気付いてくれるだろう。」

作品名:第四章三話 再出発の朝 作家名:sanze1991