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A darling things

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「パパ! 早く! 早く!!」

 娘はいつも以上にはしゃいでいた。
 元気一杯の笑顔で振り返り、早く来いと手招きして急かしている。

 家族三人で、妻の父親の家にやって来たのだ。
 駐車場から歩く間も、娘は落ちつき無く走りまわっていた。
 娘はおじいちゃんに早く会いたいようだ。父親としては、やはり嫉妬してしまう。

 私の妻は一人娘なので、義父にとって美樹はたった一人の孫にあたる。目に入れても痛くない程に可愛い存在なのだろう。
 私はその気持ちがよく分かる。分かるからこそ何も言わない。
 義父の心底嬉しそうな顔を見ると、ここにいる間は仕方ないと納得できる。

 義父の住まいは、街から少し離れた山の麓にある。
 それほど交通に不便は無く、それでいて自然に囲まれた環境なので、ちょっとした旅行には持ってこいの場所だ。
 自然に触れることは娘にとっていい影響になると思っている。
 何よりも私が娘の喜ぶ姿を見たいのだ。

 初めて娘を連れて来たのは二年前。娘が三歳の春のことだ。
 それまでは、幼い子供を連れて長時間移動するのは辛いだろうからと、義父が我が家に来て泊まったり、近くのホテルに泊まったりしていた。
 そして三歳にもなればもう大丈夫だろうと義父の住む山にやって来たのだ。
作品名:A darling things 作家名:村崎右近