A darling things
【A darling things】
男は完全に型遅れとなっている自作パソコンの電源をいれた。
ヴゥンという起動音の後に、じわじわと画面に色が灯る。
[********]
慣れた手付きで起動パスワードを入力する。
あたりはしんと静まりかえっていて、カタカタと鳴るキーボードの音だけが、控えめな反響を繰り返しては消えていった。
起動が完全に終了した事を確認した男は、デスクトップのアイコンの一つを迷わず選択し、プログラムを起動させる。
ガリガリという特異の稼動音と共に大量の文字が次々と現れ、画面の上部中央には『愛しいもの』という意味のアルファベットが光っていた。
男は、すべての文字が表示されるのを待つ間、目をつぶって大きく深呼吸をする。
程無く、ピピッという表示完了を告げる音が遠慮なく鳴り響いた。
男が選択した『蜘蛛と蝶々』という項目の下部に表示されている文字は、その男にとって絶品のワインの銘柄を見るよりも微笑ましい事だった。
―― [美樹−五歳 春]
男は完全に型遅れとなっている自作パソコンの電源をいれた。
ヴゥンという起動音の後に、じわじわと画面に色が灯る。
[********]
慣れた手付きで起動パスワードを入力する。
あたりはしんと静まりかえっていて、カタカタと鳴るキーボードの音だけが、控えめな反響を繰り返しては消えていった。
起動が完全に終了した事を確認した男は、デスクトップのアイコンの一つを迷わず選択し、プログラムを起動させる。
ガリガリという特異の稼動音と共に大量の文字が次々と現れ、画面の上部中央には『愛しいもの』という意味のアルファベットが光っていた。
男は、すべての文字が表示されるのを待つ間、目をつぶって大きく深呼吸をする。
程無く、ピピッという表示完了を告げる音が遠慮なく鳴り響いた。
男が選択した『蜘蛛と蝶々』という項目の下部に表示されている文字は、その男にとって絶品のワインの銘柄を見るよりも微笑ましい事だった。
―― [美樹−五歳 春]
作品名:A darling things 作家名:村崎右近