The El Andile Vision 第2章
しかし……実際には、彼はどうしても、そうすることができない自分がいることを自覚していた。
そんな彼の心中を見透かすかのように、エルダーの瞳に皮肉な光が宿った。
「――あなたの中に、その答えがある。いずれ、その口から聞かせてもらいましょう」
エルダーは言い終わると、すっと視線を落とした。
「おまえは――」
そのとき、イサスはようやく声を絞り出した。
その声にエルダーが再び目を上げる。
その彼を真っ直ぐ見上げて、イサスは言葉を押し出した。
「……おまえは――誰なんだ……!」
エルダーはふと目を細めた。
何とも読み取れぬような、不思議な表情がその秀麗な顔に浮かび、消えた。
――その一瞬の表情が何を意味していたのか、イサスにはわからなかった。
「そういえば、まだ名を言ってなかったな……」
エルダーのその呟きは、まるで自分自身に向かって言っているかのようだった。
「私はエルダー。エルドレッド・ヴァーン。『レグス・ヌ・フューレ』――『焔の守護者』――とも呼ばれています。……アル・トゥラーシュ・エル・ヴァルドの血を引く者……と言って、信じていただけるものかどうか――」
なぜかその口調には、どこか自嘲めいた響きが感じ取れた。
作品名:The El Andile Vision 第2章 作家名:佐倉由宇