信長、蘇生せよ、この悲観の中に
一方奈美は、今高見沢がなぜもっと強く抱き締めてくれないのか、儚(はかな)くもわかっている。
男と女。
越えてしまえばもっと辛くなる。
大人の二人には、それが怖い。
しかし、高見沢も奈美も揺れている。
踏み出そうか、留まろうか。
どちらを選択しようかと。
ここは人生の岐路。
左か右か?
選んだ瞬間に、これからの二人を決める。
「大丈夫か?」
高見沢は、こんなシリアスな場面の中で、思わず奈美に聞いてしまった。
奈美が大丈夫なわけがない。
高見沢は、何とつまらないことを聞いてしまったのかと後悔する。
しかし、奈美は涙を拭いて軽く答えて来る。
「うん、もう大丈夫よ」
奈美は、この瞬間に結論を出してしまったようだ。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊