信長、蘇生せよ、この悲観の中に
この〈原点回帰〉と〈私達も〉、これら二つの言葉はあまりにも重く、そして辛過ぎる。
高見沢の腕の中で、今あの強がりの奈美が肩を振るわせて泣いている。
奈美は、もしかしたらこのプロジェクトを通して、日経平均3万円ではなく、何かもっと女の幸せらしきものを探し求めて来ていたのかも知れない。
それは多分、生涯果て行くまでの尽きぬ愛なのだろうか。
いや違う。
それはきっと、男と女の愛の果てにある永遠の安らぎなのだろう。
だが高見沢はわかっている。
もうどれだけ頑張っても、まだまだ未来のある若い奈美が欲している幸せ、それは結局与えられないだろうと。
もうこれ以上奈美との間に、男と女の何かが起これば、お互いにもっと傷付く。
そんな事を思いながら、ただじっと奈美の心が静まるのを待っている。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊