信長、蘇生せよ、この悲観の中に
奈美の目からは大粒の涙が零れている。
地下道の暗闇を照らす僅かな光。
それが一粒一粒の涙に吸収され、キラリキラリと輝く。
そして信長の遺体の上に、パラパラと落ちて行く。
「俺達もだよ」
高見沢は一言だけを返した。
奈美は、こんなシーンを最初から予感していたのかも知れない。
そして、こんな結末への不安が、奈美をずっと苛立たせていた原因だったのかも知れない。
しかし女は、今異常に美しい。
凛とした奈美の立ち姿。
そこには、溢れる涙はあるが、強さだけは壊さまいと奈美の背筋が伸びる。
愛し過ぎる。
高見沢は奈美をそっと抱き締める。
「原点回帰をしよう」
高見沢は再びそう告げた。
そして、女はもう一度小さく呟き返す。
「私達の … お互いの想いもなのね」
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊