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信長、蘇生せよ、この悲観の中に

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夏木奈美は、東京渋谷の証券会社に勤める、三十路半ばのバリバリのキャリア・ウーマン。
スラッとスリムで現代風。
なかなかのベッピンさんなのだ。

奈美とは、昨年旅した探し物発見ツアーで知り合った。
だが特に深い関係にあるということではなく、単なる友人。

しかし、なぜかそれ以上に気が合い、うまく表現が出来ないが、二人ともにとって摩訶不思議な間柄だとも言える。

奈美は今日、ルイヴィトンのバッグ一つを肩に掛け、朝の新幹線に飛び乗って京都までやって来てくれた。
仕事から解放された自由な気分で、リラックスした雰囲気が伝わって来る。

高見沢は、そんな奈美を相手に、哲学の小径をぶらぶらと二人で逍遙している。
そして、ここまで出向いてくれたことへの精一杯の謝意を込めて、奈美に答える。

「奈美さん、今日はありがとう、わざわざ東京から出て来てくれて … 実はですね、大事なお願いがあるのですよ、まあ食事しながらでもお話しさせて下さい、祇園の方へ出て、京会席を御馳走しますから」

これを聞いた奈美が急に嬉しそうな表情となる。
「そう、それじゃ遠慮なく御相伴に預かるとして、私一度でいいから、丹波まったけが食べたかったの、国産の香りの良いまったけをね、土瓶蒸しと焼きまったけがいいわ、もう旬の季節でしょ」