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信長、蘇生せよ、この悲観の中に

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高見沢は奈美の感動した言葉に心が揺らいだのか、思うところをそのまま口にしてしまう。

「へえ、奈美ちゃん、男の美学ってスゴイこと仰るよな、だけど、なんで切腹することが男の美学なんだよ、俺にはそんな美学なんか理解出来ないぜ、人生恥じてもシブトク生きる、その方がずっと勇ましいと思うよ」

一方奈美は、クローンとは言え信長の偉大なる自決を前にして頭が冴え、感性がより過敏になって来ている。

「そうね、平成のオッチャン・サラリーマンには、こんな美しいことは全く理解出来ないでしょうね、高見沢さん、それにシブトク生きるって言ったでしょ、それはどちらかと言うと、女の美学よ」

高見沢は、そんな女の勢いに押されて、大きく頷かざるを得ない。
「なるほど、シブトイのは女の美学か、そうだなあ、戦国の世の女性達、お市の方におねとまつ、皆さんシブトく生きたよなあ、あの北の庄落城の時に、茶々十七歳、お初十五歳、お江十一歳の浅井三姉妹が燃える城から逃れ出て来た、そしてその後、どれだけシブトく生き抜いたことか、うーん、完全に納得!」

こんな高見沢の同調に、奈美が気を良くすると思いきや、今度はただ一点を見据えて、何かを決心したかのように言い切って来る。

「だけどホント辛いわ、されどこのプロジェクト、日経平均3万円になる前に、日本が戦国の世に逆戻りしてしまったら、私達一体何をして来たのかわからないしね、そうね、この信長君の二度目の切腹、あまり深刻に考えずに、さらっと受け流すことにしましょう、単に機が熟していなかっただけだったのよ」