信長、蘇生せよ、この悲観の中に
そんな高見沢に、奈美が遺書をもう一度丁寧に読み直し、疑問をただして来る。
「高見沢さん、これってどういうこと、二度目の切腹って? 高見沢さんの説は、火薬が爆発して、信長君が不運にも地下道に埋もれてしまったという事故説だったわよねえ」
「うーん、そうだなあ、だけど真実は本人が語るように、四百年前に地下道に閉じ込められてしまい、そしてそこで進退窮まり、一回目の切腹をしたのかもなあ」
奈美はこんな高見沢のあやふやな話しに、「絶体絶命の窮地に追い込まれた事はわかるのだけど、信長君はどんな気持ちで一回目の自決を決断したのかしら?」と納得し切れてない。
高見沢はそれにもっともらしい事を口にする。
「今回と同様、未来を待つために腹を切ったんだよ」
奈美はこんな会話で段々と感極まって来ているのか、目が潤んで来ている。
「今回は二回目の切腹なのね、クローン・信長君に、辛い選択を強いてしまったんじゃないかって私思うの、悲しいわ、今の時代に無理矢理誕生させてしまったのは私達二人よ、信長君ゴメンなさいね、きっと君の野望は大き過ぎたのだわ、だから再び骨となり、時空を越えて時を待つ、今回もそんな決心をしたのね、勇気ある決断だわ、これぞ男の美学だね」
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊