信長、蘇生せよ、この悲観の中に
高殿と奈美姫へ
其方(そち)達には世話になり申した。
生者必滅(しようじやひつめつ)でもあり、会者定離(えしやじようり)。
是非に及ばず。
二度目の切腹を許せ。
現世に蘇生してみたものの、我が天下布武は現代社会では成立致さぬと結論致した。
すなわち、株式悲観相場の悲観より、もっと戦国乱世の世であらねば、その効力は生かされぬと。
この地下で、ふたたび死して …
さらにその時を待つ。
現代の世に蘇生したクローン・織田信長より
高見沢と奈美の間に重い沈黙が流れる。
そしてまずそれを破るのは奈美。
「高見沢さん、信長君って、さすが感性が研ぎ澄まされていたのね、だから自害を選んでしまったのだわ」
奈美が意外にもさっぱりとした口調で感想を漏らして来る。
高見沢はそれに対し、「うーん、日経平均3万円の達成のために、もうちょっと違った生き方もあったのになあ」と思いに耽っている。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊