信長、蘇生せよ、この悲観の中に
それでも高見沢も信長も、鞄に金塊を詰め込むのに必死。
そんな時に、奈美が悲しそうな声を発して来る。
「ねえ、ねえ、高見沢さん … ねえってば」
あの強気の奈美姉さんが、どうも涙をこぼしているようだ。
「奈美ちゃん、一体どうしたんだよ、突然泣き出したりして、オモラシするほどの嬉し泣きなのか?」
だが奈美は悲痛な顔で否定して来る。
「そうじゃないのよ、アーン、ウォーン」
「男より黄金が好きだなんて、そんな舞い上がった発言をするからだよ、ホントのところは、やっぱり男が好きなんだろ?」
しかし奈美は泣きながら訴えて来る。
「ねえ、高見沢さん、これって犯罪じゃない?」
「犯罪? 何でだよ?」
高見沢はカーと頭に血がのぼって来た。
「だって、これって、人のまったけ山に入って、まったけ頂いて帰るようなものでしょ」
「アホか! この金塊は、山で自然に生えたもんとチャウで、年代は経ってるけど、信長が自分の意志で、ここに隠したものなんだよ、明らかに信長の所有物だよ、自分で隠しておいた金塊を、四百年経って家に持って帰って、何で罪になるんだよ、まったけ山のまったけとチャウ!」
高見沢は怒りが爆発している。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊