信長、蘇生せよ、この悲観の中に
奈美からいきなり振られた質問に、高見沢は持参して来た地図を開き、位置確認をする。
そして時を置かず驚きの声を上げる。
「えっ、これってどういうこと、竹生島って、ここから真北の方向にあるぜ、北の夜空に不朽に輝く北極星、その方角に神が宿る島・竹生島がある、そして黄金の埋蔵金への入り口は、そんな神の島に向かって開かれているのだ」
高見沢はこんな取って付けたようなロマンに感激している。
一方奈美は、「北極星も神様も有り難いけど、今は私達の方がもっと大事なの、北はこっちなの、とにかく行ってみましょう」とさっさと歩き出した。
「女は、なんでいつもこう現実的なんだよ」
高見沢も信長もそうブツブツと吐きながら、北に一直線に向かう奈美を追っ掛け、急な斜面を三人で下りて行くのだった。
山の雑木は激しく生い茂っている。
そして斜面は急勾配。
よほど気を付けなければ、下まで転げ落ちてしまいそう。
しかし三人は、そんな事にひるんでいる場合じゃない。
とにかく無我夢中。
どろどろになりながら、五分ほど斜面を下った。
そして、山の中腹まで下がったところに、少し広がりのあるスペースがあった。
「高殿に奈美姫、あれを見ろ、遂にあったぞ、北斗の双子岩が、あれこそが石蔵へと通ずる横穴の入口ぞ」
信長の指差す方向に、二人が目を向けてみると、木々の合間に三メートルはあろうか、大きな二つの石がもたれ合っている。
どうも下部のほとんどは土に埋もれているようだ。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊