信長、蘇生せよ、この悲観の中に
「えっ、蛇石は、今私達が立っているこの下にあるの?」
「奈美姫、その通りじゃ、戦国の世、大きな建物を建てる時は、基礎が弛まないようにのう、大きな石を地下に埋めたのじゃ、じゃによって、安土の天守閣は、蛇石の上に建っておったということになり申す、よってもって、その蛇石の下に石蔵があってのう、そこに金塊がザックザックとあり申す」
これを聞いて、高見沢も奈美も思考がまとまらず、ポカーンとしている。
しかし、暫くして奈美ははっと気付くのだ。
「ということは、その大きな蛇石の下に目指す石蔵があって、そこに軍資金が眠っているということなのよね、うーん … それじや掘れないじゃん!」
奈美の肩ががっくりと落ちる。
しかし、信長は気落ちしてしまった奈美を気遣い、元気が出て来る話しを明かす。
「奈美姫、心配召されるな、石蔵へは横穴があるぞ、その入口がちゃんとござるのじゃ」
「わっお〜、信長君、その入口ってどこなのよ? 早く教えて頂戴!」
奈美は一転明るい表情となり、信長の腹を指で繰り返し突っついている。
こんな奈美からの追求に、信長はきりっと背筋を伸ばし、「入口は、この天主の中心と竹生島(ちくぶしま)とを結んだ線上、その山の中腹にござる」とさらりと明かした。
信長のこの発言に、高見沢も奈美も思わずビッグハンド(大拍手)。
そして奈美は止まらない。
「信長君、ようく思い出してくれたわね、僕ちゃんも随分とお利口さんになっちゃって、カワユイ、カワユイ … ところで高見沢さん、竹生島ってどっちにあるの?」
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊