信長、蘇生せよ、この悲観の中に
そんなドタバタをやりながら、三人はやっと西の丸跡地までやって来た。
だが、高見沢も奈美も血の気が引いている。
「信長よ、この先もうちょっと行くと天主があるのか?」と、高見沢は神に祈る思いで聞いてみた。
「左様、もう少しじゃ、頑張らっしゃい、只今より拙者が黄金の天主にお主らを案内申す、有り難く思え」
信長がえらく威張った口ぶりだ。
それを聞いていた奈美、間髪入れずに信長を問い詰める。
「ねえ信長君、黄金の天主も良いけどね、今となれば、全部がまぼろしなの、もうお城はなくなっているのよ、理解しているでしょ … そんなことよりね、軍資金が眠っているという蛇石はどこにあるのよ、まだ思い出せないの?」
「奈美姫、そう慌て召されるな、まずは天主から蛇石の位置確認が必要ぞ」
信長は今度はゆったりと構え、もったい付けて返して来る。
軍資金発見へと心が焦る高見沢と奈美、そして自分の城へと招待してやってるつもりの信長君。
こんな行き違いのかけ合いを繰り返しながら、三人はやっとのことで急な石段を登り詰めた。
そして天主の跡地になんとか辿り着いたのだ。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊