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信長、蘇生せよ、この悲観の中に

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「お主、しんどくないのか?」と、高見沢は信長に問い掛けてみる。

「ここは拙者の城ぞ、慣れておるわ」
信長はそう言い放ち、「平気の平左よ、これこそ当たり前田のクラッカー!」とオヤジ・ギャグを飛ばして来る。

しかし、どこで憶えて来たのだろうか、昭和年代もので古臭い。
その上に、唐突に「吟じま〜す!」と。

「おいおいおい、吟じるって? こんな息が上がってる場面で、そんなの止めろよ!」
高見沢は精一杯阻止しようとした。

しかし信長は、そんな引き止めに聞く耳持たず、なぜか李白の「早(つと)に白帝城を発す」を朗々と吟じ出す。


朝(あした)に辞す 白帝彩雲(さいうん)の間(かん)
千里の江陵(こうりよう) 一日(いちじつ)にして還(かえ)る

両岸(りようがん)の猿声(えんせい) 啼(な)いて住(や)まざるに
軽舟(けいしゆう) 已(すで)に過ぐ 萬重(ばんちよう)の山

確かに、そこには無事に帰って来たという意味合いがあるが、ちょっと場面が違うような気がする。
その上に調子が外れてる。

高見沢も奈美も、気分が余計にうううっと悪くなって来た。
しかし信長は、そんな二人の事は捨て置き、自分の世界に浸り切っている。

そしてその後、エネルギッシュに、秀吉や前田利家の屋敷跡前をさっさと通り過ぎ、どんどんと登って行くのだ。
それを高見沢と奈美が、ゼーゼーと息を切らせながら追い掛ける。