信長、蘇生せよ、この悲観の中に
本能寺の変の謎解き、三人は車内でそれを話し込む内に安土城跡へと到着した。
そして城山の登り口へと降り立った。
辺りは初夏の中。 新緑で覆われた安土山が目映いばかりの陽光を受け、キラキラと輝いている。
信長が日本統一の覇権を掛けて、象徴として選んだ山が目の前にある。
そこからは湧き出て来る歴史の重みが感じられ、まことに荘重で美しい。
そんな山を面前にした三人は、これから始まる埋蔵金探しの緊張なのか、一度大きな深呼吸をする。
そしておもむろに天主への石段へと、すなわち大手道を登り始める。
それは幅六メートルはあろうか、西の丸へと直線で繋がる安土城正面の坂道。
暫くしてから、最初に奈美が言葉を発する。
「私、安土城に来たの初めてだけど、信長君、アンタ、石仏まで石段に使ったのね、もう何回も踏んでしまったわ、大丈夫かしら … 罰は当たらないでしょうね」
「石仏、そんなものはただの石っころじゃ、心配要らぬ」と、信長はやっぱり強気。
「そうなの、だけどこの石段は急勾配で、心臓がパクパクして、貧血起こしそうだわ」
「そうだよなあ、メッチャ急な石段だよ、もうちょっとペースを落とそうか、だけど、さすが信長、ぜんぜん平気な顔してやがんの」
高見沢は、奈美以上にゼイゼイと荒い息使いをしている。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊