信長、蘇生せよ、この悲観の中に
「一方家康は、この混乱に巻き込まれたら大変だと家に帰ってしまうのよね、この天下盗りゲーム、本当に面白いわ、私も野次馬で、じかに見たかったなあ」
「奈美ちゃん、その通りだと思うよ、俺もスタンドからこのゲーム観戦したかったよ」と、高見沢は完全に同意。
また信長は、本能寺の変をやっと理解してくれた二人に微笑んでいる。
そして最後の説明を加える。
「悔しいが、火薬に火が点いて、不運にも地下道は封じられてしもうてのう … 二度と地上に這い上がることが出来なくなってしまった」
「本当に、残念だったね」と高見沢と奈美がその言葉に同調した。
「もしもあの時、拙者が地下道なんかに埋もれずに安土に取って帰し、兵を興し、光秀の謀反にうまく便乗して、朝廷/公家を滅亡させていたとしたら … 今の日本は、ひょっとしたらまた違った形になっておったかも知れないなあ」
「そうだよ、本能寺の変こそ、日本の姿形の分岐点だったんだよ」
高見沢は結論めいたことを言い放っている。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊