信長、蘇生せよ、この悲観の中に
しかし暫くして、突如荒々しく吠え出すのだ。
「サ・イ・テ・イ! やっぱり高見沢さんて、サイテイ・ヤローなのね、この天下布武の男のロマンに懸けて生きる織田信長君が、そんなバカなことするわけないでしょ、それに淑女・煕子さんに誠に失礼だわ」
奈美が止まらない。
「アンタねえ、もうちょっと格調高い推理が出来ないの、このオタンチン! 全国の歴史ファンに殺されるわよ、ねえ信長君どうなのよ、こんなオヤジに、芸能ルポなみの低俗な新説を宣(のたま)われてしまって … 怒りなさいよ!」
戦国の世、日本の歴史を大きく変えた一大事件、それは本能寺の変。
高見沢は、その原因を信長の女性問題、それも不倫だったと主張する。
奈美はこんな高見沢の巫山戯た俗説に怒り出した。
もうアホらしくって言葉が出て来ない。
そんな時に、信長が実に苦しそうにぽつりと呟く。
「当たらずといえども遠からず」
これを耳にしてしまった奈美が、今まで信長を育てて来た愛情を裏切られたのか、余計に腹を立て出した。
「信長君、アンタ、そんな安っぽい男だったの、もう私、あなたの面倒みるのを止める … 今から東京へ帰る!」
奈美がヒステリックになり出した。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊