信長、蘇生せよ、この悲観の中に
一方高見沢は、どうして不倫関係に陥ったのか、そこの真実を確認したい。
「信長よ、おまえがそんな夫婦の中に無理矢理に割り込んで行ってしまった、それは単に魔が差したという事なのか?」
ずばり聞かれた信長は、じっと沈黙を保っている。
奈美は「えっえー、やっぱり不倫なのね」と、信長の様子を見て苦悶している。
そして、感ずるままにぶつぶつと呟くのだ。
「それで信長君は、光秀に恨まれてしまったのね、なるほどね、信長君、アンタ、本能寺で襲撃を受けた時に、是非に及ばずと訳のわからない名言を吐いたでしょ、是非に及ばずって、やむ得ないっていうことでしょ、奇襲されてその死の間際に、今までなぜそんな言葉を吐くのかよく理解出来なかったけど … 不倫が原因だったとしたら、そこに隠された深い意味がわかるわ」
さらに奈美は、「男女問題が原因なんて、信じられない歴史解釈だわ、だけど、一番真実に近いような気もしないでもないわね、うんうん」と自分で一人頷いている。
高見沢はそんな奈美の呟きに、さらに調子に乗ってしまう。
「本能寺の変には、怨恨説/野望説/陰謀説、いろんな学説があるだろう、だけどね、俺の不倫説は本邦初公開、全くの新学説だよ … どうだ、これ?」
奈美はこんな恥じらいもない高見沢の主張に何も返さず、ただただ沈思黙考。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊