信長、蘇生せよ、この悲観の中に
すると高見沢は、ますます得意顔。
「イエス・マム、信長が反省すべきことは、一時の男女の出来事を甘く見過ぎたことなんだよ」
奈美はこんな高見沢の推論に、大仰天。
「何がイエス・マムよ、高見沢さん、あなたねえ、本能寺の変は、不倫が原因だったって言うの、そんなバカなこと言わないでよ!」
奈美はもう叫ばざるを得ない。
しかし、高見沢はそんな奈美のあっけにとられた様相を気にも留めず、しみじみと述懐する。
「明智光秀は、妻・煕子以外に側室ももうけず、妻を愛し続けた男なんだよ、これこそ夫の鏡、本当に煕子への愛一途で、生涯清廉潔白に生きた立派な男だよ、それに妻の煕子は、夫のためなら、女の命の黒髪まで売ってしまう性根の座った奥さんだったんだよなあ」
「そうよ、煕子は、糟糠之妻(そうこうのつま)なのよ、それなのに、なぜ?」
奈美は合点が行かない。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊