信長、蘇生せよ、この悲観の中に
「信長、おまえは光秀に狙われていることに気付いていたのだろう、というのも、これは謀反じゃなくて、光秀の個人的な恨みだったのじゃないのか?」
信長は、いきなり核心に踏み込まれたのか、「高殿の想像通りじゃ、拙者はもちろん光秀が攻め入って来ることは知っておったぞ」と肯定し、「そんなところまで、バレておったのか」と首をすくめる。
そんな信長の反応に、高見沢は自信を得たのかまずは大きく息を吸い込み、暫くの間を取る。
そしてそれから声のトーンをぐーんと落とし語り続ける。
「明智光秀の妻は煕子(ひろこ)だったよなあ、彼女は安土城の築城完成パーティに出席したろ、その時に、信長、お主なあ、天空の黄金の茶室に煕子を誘って、仲良くお茶したろ、それで言ってしまうぞ、そこまでで止めときゃ良かったのに、信長おまえ、ふとしたハズミで、人妻・煕子と、もっと仲良くしてしまったんだろ?」
こんな話しをじっと聞いていた奈美は、「ちょっと高見沢さん、それって、どういう意味なのよ」と、混乱した頭の中を整理しようとしている。
そして暫らくして、奈美は事の内容を理解したのか、短く言い漏らす。
「それって … 不倫?」
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊