信長、蘇生せよ、この悲観の中に
話しが蛇石の下の石蔵などとより具体的になって来たものだから、奈美の方は正直もっと焦り出してる。
「蛇石っていうのが確かにあったこと、私も知ってるわ、今話題になっていて、安土城ファンのみんなが探してるのでしょ、だけどまだ見つかってなくって、どこにあるのか判明していないのでしょ、ねえ信長君、アナタ知ってるのね、蛇石って、お城のどこにあるの? ねっ、正直に教えて、ねっ、信長君たらっ!」
しかし信長は、またまことにのん気なことを言ってのけるのだ。
「許せ! 忘れ申した」
信長は、蛇石のありかを事もなげに忘れてしまったと言う。
「だったら掘れないじゃん! この間抜け者めが!」
奈美が今にも切れそう。
信長はそんな雰囲気を感じ取ったのか、他のオプションを申し出て来る。
「安土へ行って、現地確認をしたいが、如何なものかな?」
しかし、四百年以上も前の出来事。
現地確認をしたところで、信長がそのありかを思い出すかどうかの確証はない。
高見沢も奈美もガクンと力が抜けてしまった。
そして暫く重い沈黙が続いて行く。
その後に、高見沢はやっと気を取り直し、己の決断を告げる。
「信長、おまえはもっと切れ者と聞いてはいたが、案外鈍い親方様だなあ、まっいっか、資金がないと、今の悲観相場を打ち破り、日経平均上昇に打って出る事が出来ないのだから、明日とにかく現地確認に、そう、安土城跡へ三人で出掛けてみることにしよう」
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊