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信長、蘇生せよ、この悲観の中に

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奈美は高見沢の説明をじっと聞いている。
そして、まるで四百三十年前にタイムスリップしたかのように、あの事件の朝の緊張を全身で感じ、それを吸い取っている。

「ところで、この空地は何なの?」 奈美が突然聞いて来た。
「この空き地はね、この間まで小学校があって、少子化で今は廃校になってしまったんだよ、それで単に更地に戻してあるだけだと思うよ」と高見沢は淡々と答えた。

そして空地の角には、「此付近本能寺址」という石の標識がぽつんと立っているだけ。
そんな淡白さが余計に二人の脳を刺激して来る。

「ふーん、そうなんだ、ここが明智の軍勢一万三千が攻め入った所なのね、今は誰も気付かないような、何と言ったら良いのかなあ、こんな日常的な所にあったんだわ … それで高見沢さんの説によると、この辺の地下のどこかに、織田信長の遺体が今も眠っているのね、もしそれが本当なら、スゴイわ」

奈美は本能寺の跡地に立つ興奮で少し上気している。 
そのせいか、白い肌がほのかに紅い。