信長、蘇生せよ、この悲観の中に
「ごめん、実は最初、そうお願いしようと思ってたんだけど、今は方針変更で、マウスを使ってみるよ」
これを聞いた奈美はもう開いた口が塞がらない。
「高見沢さんて、そんなショーモナイことを毎日考えてるの、そんな話しのために、私をわざわざ東京から呼び出したの、アンタ、やっぱり完璧に … 大馬鹿だよ」
中年の高見沢は、大馬鹿呼ばわりされれば、ますます己の歳を忘れてムキになって来る。
「俺は真剣だぜ、これは遊びじゃない、自分の塩漬け株からの脱出のために、こんなプロジェクトを必死に考えてるんだよ、市場が悪い悪いと言いながらチョロチョロした売り買いだけで遊んでいても、そんなもの海辺で小波と戯れているようなもの、迫力がない、それに夢も希望もない、だから俺は、信長に生き返ってもらって、今のマーケットの悲観から脱出させてもらうんだよ! 頑張るぞ!」
絶叫する高見沢。
それに反し、奈美はすこぶる冷静。
「高見沢さんの気持ちは痛いほどわかるわ、だけど熱意があることと、実現出来ることとは、また別物なんだよ」
奈美がこんな意見で水を差して来たが、高見沢は諦めない。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊