信長、蘇生せよ、この悲観の中に
高見沢は、どうも信長は本能寺の炎の中で自害をしていない、つまり事故での死亡であり、遺骨は燃え尽きずに残っていると主張しているようだ。
しかし奈美は、「ふーん、そうなの」と他人事のように相槌を打つしかない。
高見沢はそんな奈美に、さらに力を入れて亡骸消滅説を否定する。
「奈美ちゃん、いいかようく聞いてよね、確かに信長の遺体は、今日まで誰にも発見されてない、だけどね、信長は日本の国王になろうとしていたし、その上に、神にまでなろうとしていたんだぜ、自害して自分の身を焼き尽くしてしまうなんてするわけないだろ、今までの遺体の行方不明、それは単に、まだ見つかっていないだけなんだよ」
奈美は高見沢のあまりの勢いに押されたのか、深く考えずに、「そういう事なのね」ととにかく頷いてみせた。
そしてその後、「それじゃ、信長の遺体はどこにあると思うのよ?」と、奈美が少し冷静に質問して来る。
これに高見沢は待ってましたとばかりに、「その答えは、地下道だよ! 不幸な事にね、信長は奇襲を受けて、それで本能寺の地下道を通って逃げようとしたんだよ、その途中で地下道が崩れ、閉じ込められて死んでしまった、だから未発見の遺骨は残っている、これこそが歴史の真実なので〜す」と声を張り上げる。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊