信長、蘇生せよ、この悲観の中に
奈美が電話の向こうから涙声で話して来る。
「ねえ高見沢さん、強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ、そんな格言があるでしょ、その冒頭の強気相場を、愛に … そう、愛と言う言葉に読み替えてみて」
高見沢は奈美に請われるままに、置き替えてみる。
「愛は … 悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福のうちに消えて行く」
「私達の愛は、悲観の中で生まれたところなのかもよ、だからこの後を続けて欲しいの」
奈美はこんな事を話して来た。
高見沢は、この奈美の「私達の愛は、悲観の中で生まれたところなの」の言葉を咀嚼(そしやく)し、じっと考え込んでいる。
そして、少し考えがまとまったのか、奈美に優しく話し出す。
「奈美ちゃん、俺達、原点回帰しようって言ったろう、ひょっとすると、その原点回帰をする場所を間違ったのかも知れないね」
「そしたら、その本当の原点回帰をしなければならなかった場所って、どこなの?」
奈美が涙を言葉に滲ませながら直ぐに聞いて来た。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊