信長、蘇生せよ、この悲観の中に
「新聞で読んだのですけど、どこかの証券会社が、この悲観相場からの脱出のためなんでしょうね、最後の賭けなんですよ、本能寺を掘り起こすんですって、わかります、これ? 織田信長ですよ、四百年以上経って、信長さんに再登場してもらい、ニュー・リーダーとして活躍してもらうんですって … これ、どう思われます?」
この話しを聞いて、高見沢の胸がドキドキと高鳴って来る。
されど一見興味がない風を装って、「それは、良い考えだなあ」と軽く答え返す。
しかし、榊原はまだまだ調子に乗って来る。
「グッド・アイディアですよね、これで株も暴騰間違いなし、バブルの再来ですよ、日本国中のみんながハッピーになりますよ、高見沢さんも希望を捨てずに、沸騰相場がやって来るまで、我慢強く生き延びて下さいよ」
高見沢はこれをじっと堪えて聞いていた。
そして、さすが百戦錬磨の高見沢一郎。
ニヤッとニヒルに笑い、まるで達観しているかのように答える。
「日本変革のために織田信長ってか、なるほどねえ、案外人間て、不幸な時はみんなこんな事考えるものなんだなあ、これぞ人間の性か、ホント、悲しくもオモロイ習性だよなあ」
「左様でございますか、それで、高見沢さんの信長蘇生案への御意見は?」
榊原が茶化すように聞いて来た。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊