信長、蘇生せよ、この悲観の中に
さらに奈美は、より決着を付けるように、「このプロジェクト、主役がいなくなってしまったわ、もう意味ないよね」と閉鎖を匂わせて来る。
高見沢も、もう幕引きすべきと思っている。
「俺達のこのプロジェクト、本日をもって終了という事だね」
「ちょっと寂しくなるわ、だけど仕方ないわね、もう終りにしましょう」
奈美もあっさりとした口調。
そして微笑み、「今日が織田信長の第二の命日になるのね、この記念となる日を忘れないわ」と告げて来る。
女は記念日が好き。 そしてそれを語る時、女は至極健全。
当然男には、それを支える義務がある。
「信長の第二の命日か、そして今日が俺達の新しい旅立ち、その記念日となるのかなあ、奈美ちゃん、俺忘れないよ」
高見沢は特に奈美にお愛想をしたわけではない。
だが、こんな気の利いたようなことを吐いてしまっている。
「私達の関係も晴れて原点回帰ね、日経平均は目標を達成する事が出来なかったけど、このプロジェクトに誘ってもらって、一緒に走らせて、私、結構面白かったんだよ、高見沢さん、ありがとう」
女は決心すれば実にシンプル。
もう後悔はしていない。
奇麗に終わらせてくれた高見沢に、今は感謝さえしている。
微笑む顔が柔らかい。
高見沢も笑っている。
作品名:信長、蘇生せよ、この悲観の中に 作家名:鮎風 遊