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魔物達の学園都市

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終章 母娘EXTREMES



 初夏の陽射しの中、俺は教室へと向かっていた。
「ほら、何やってんだよリーユン。入るぞ?」
 教室の前で、俺はリーユンの手を引く。
「あ、ま、待って黎九郎! 私、やっぱりみんなに合わせる顔が無いもの!」
 言って、リーユンは必死に俺の手を振りほどいた。
 まぁ、生真面目なコイツの気持ちは、俺にだって分かってるんだ。でも、このままでいいワケもない。
「いいから行くぞ! このあと学園長にも会わなきゃならないんだから!」
「きゃっ?」
 俺は再びリーユンの腕を掴むと、同時に教室の入口を開け、半ば放り込むようにして彼女と共に入室した。
 教室にはクラス全員が揃っていて、その視線の全てが俺達を捉えている。
 俯くリーユン。その腕から、微かな震えが伝わってくる。
 今回の一件、顛末はクラスの――いや、学園都市の誰もが知っているワケだ。
 それから、被害に関する事で、学園長と春菜先生が、四方八方、色々と『尽力』していた事も俺は知ってる。
 そして、その尽力がムダに終わったという事も。
 だから、俺はリーユンの手を握り、小声で告げた。
「やっちまったもんはしょうがねぇだろ? 大丈夫だよ、みんなが怒ってても、俺が護ってやるからさ」
「で、でも私、償いきれない事しちゃったから」
「誰も死んでねぇんだから、大丈夫だって。いいから顔上げて見てみろよ」
 うん、そう、あれだけ都市に被害が出ていながら、実際、誰一人として死んでないとか。さすがは魔物デスな。
 俺はリーユンを促すように肘で小突く。
 と、彼女はようやく不安げな顔を上げた。
「あ、あのっ! み、みんなっ! そのっ! ご、ごめんなさい!」
 不安の中に、多少の羞恥を混ぜ込んで、リーユンは再び逃げるようにして頭を下げた。
 そんな彼女を、ただ静寂が包む。
 だが――
 パチ、パチ……。
 始めは、少し控えめな音。
 パチパチパチ……。
 やがて程なく、その音は大きくなり、至る所から湧きでてきた。
 そしてそれは、いつしか盛大な拍手となって俺達を包んだ。
「あ、え? あれっ?」
 状況を飲み込めず、リーユンが目を丸くして俺を見詰める。
 俺は苦笑した。多少なりと、リーユンに対して呆れながら。
 みんながリーユンを誤解していたように、リーユンもまた、クラスの連中を良く見てなかったって事だ。『魔物』なんだぜ? コイツらは。
 だからこそ、どっかズレてて、それでいて当たり前な、こんな言葉が贈られるワケで。
「いいぞ委員長!」
「面白かったぜ!」
「年に一回くらい、こんなイベントあってもいいよねぇ!」
 言葉通り愉快そうに、口々に告げられる賛辞。誰一人として恨み言の一つも言ったりしない。
「だから言ったろ? 大丈夫だって」
「うん……ありがとう、みんな!」
 はにかみながら、それでもリーユンは満面の笑顔をクラスメイト全員に向けた。
「じゃあ、次は学園長室だな」
「……うん」
 俺はクラスの連中に軽く手を挙げると、リーユンと共に教室を出た。
作品名:魔物達の学園都市 作家名:山下しんか