小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

魔物達の学園都市

INDEX|57ページ/60ページ|

次のページ前のページ
 

 リーユンが縛めを解いて立ち上がった時、俺はさすがに力尽きてしまった。
 ハイ・ヒューマンだって、連日の死闘はさすがにしんどいっつーの。
 俺を抱きとめてくれたリーユンと、そして俺の身体が、冷たい海に投げ出される。
 ふと思ったのは、どうやって帰ろうかって事と、どうやら、インフラソニックの影響で、俺とリーユンが真っ裸になってんじゃないかって事だ。
 まぁ、そりゃそうか。着てる服だけ助かるなんて、ご都合主義も甚だしい。
 波間に浮かびながら、俺とリーユンは互いを抱き締めていた。
 腕の中にあるのは、今にも壊れそうなほどに華奢で柔らかな女の子の身体。
 人でも魔物でもない、この世界でたった一人だけの俺の同族、リーユン・エルフ。
 二人分の温もりが、互いを温めている気がした。
 改めてそう意識すると、俺は急に気恥ずかしくなってくる。
 だから、彼女の耳元に、誤魔化すように囁いた。
「その……どうやって、帰ろうな?」
「そこまで考えてなかったの?」
 少しだけ身体を離し、楽しげに微笑みながら、リーユンが言う。
 俺が見たかったものが、今ここにある。
 というのに、俺は思わず視線を外してしまっていた。
 気恥ずかしい!
 メッチャ気恥ずかしい!
 なんなんだろうこの気持は?
「そ、その……どんだけ沖に出たか、憶えてねぇなぁ」
 そう言いながらリーユンの顔をチラ見すると――
「え、えっと……五十キロくらいだったら、キミを引っ張って泳げるよ?」
――彼女もまた、どこか所在無さげに視線を外してしまった。
「あ、じゃ、じゃあ、そうしてもらうかな。体力回復したら、その後は俺が引っ張ってやるからさ」
「うん」
 もう一度リーユンは微笑み、そそくさと俺の手を引いて泳ぎ始めた。

作品名:魔物達の学園都市 作家名:山下しんか