魔物達の学園都市
リーユンが縛めを解いて立ち上がった時、俺はさすがに力尽きてしまった。
ハイ・ヒューマンだって、連日の死闘はさすがにしんどいっつーの。
俺を抱きとめてくれたリーユンと、そして俺の身体が、冷たい海に投げ出される。
ふと思ったのは、どうやって帰ろうかって事と、どうやら、インフラソニックの影響で、俺とリーユンが真っ裸になってんじゃないかって事だ。
まぁ、そりゃそうか。着てる服だけ助かるなんて、ご都合主義も甚だしい。
波間に浮かびながら、俺とリーユンは互いを抱き締めていた。
腕の中にあるのは、今にも壊れそうなほどに華奢で柔らかな女の子の身体。
人でも魔物でもない、この世界でたった一人だけの俺の同族、リーユン・エルフ。
二人分の温もりが、互いを温めている気がした。
改めてそう意識すると、俺は急に気恥ずかしくなってくる。
だから、彼女の耳元に、誤魔化すように囁いた。
「その……どうやって、帰ろうな?」
「そこまで考えてなかったの?」
少しだけ身体を離し、楽しげに微笑みながら、リーユンが言う。
俺が見たかったものが、今ここにある。
というのに、俺は思わず視線を外してしまっていた。
気恥ずかしい!
メッチャ気恥ずかしい!
なんなんだろうこの気持は?
「そ、その……どんだけ沖に出たか、憶えてねぇなぁ」
そう言いながらリーユンの顔をチラ見すると――
「え、えっと……五十キロくらいだったら、キミを引っ張って泳げるよ?」
――彼女もまた、どこか所在無さげに視線を外してしまった。
「あ、じゃ、じゃあ、そうしてもらうかな。体力回復したら、その後は俺が引っ張ってやるからさ」
「うん」
もう一度リーユンは微笑み、そそくさと俺の手を引いて泳ぎ始めた。