魔物達の学園都市
装甲表面のアーマーチップに大電流を流し、硬度を飛躍的に上げ、爆発にも耐性を持たせる技術だ。つまりはリニアランチャーの弾速でも、形成炸薬弾の爆発でも傷ひとつ付かないという事。それはすなわち、タケミナカタの武装は何も通用しないという事を示している。
「……ま、そんなとこじゃないかと思ってたけどな」
俺は頬を一掻きすると、コックピットのハッチを開け放った。
再度タケミナカタを襲う無数の砲弾。それらをすべて避けると、俺は武則天に再接近した。
「短い間だったけど、世話になったな、タケミナカタ」
俺はコックピットから武則天の装甲上に降り立つと、振り返ってその姿を目に焼き付けた。
俺はタケミナカタを遠隔操作にして、その巨体に命じる。成層圏へと昇れ、と。
そんな俺の視界に、再びリーユンが――いや、その中で彼女を操っているヤツが姿を見せた。
実に気に入らない。そいつは笑ってやがるんだ。リーユンに似つかわしくない、邪な貌で。まるで、もうすでに勝利を手にしたかのように。
「単身降り立ち、さて、それでどうする? 確かにそこにいれば、むしろこちらからは手を出せないが」
「慌てるんじゃねぇ。覚悟しやがれ」
俺もまた、武則天の装甲上で思い切り不敵な笑顔を作ってやった。
「俺は東郷黎九郎! よくわかんねーけど日本人だぜ! で、日本人なら十八番ってのがあるんだよ!」
俺は右手を高く上げ、虚空を指し示した。
うん、実は一度やってみたかった。技名叫んで攻撃すんの。
「食らえ! タケミナカタ――カミカゼアタック!」
その瞬間、成層圏に上げたタケミナカタが、瞬時に最高速度――光速の六十四倍に達し、武則天に激突した。
轟音、
振動、
衝撃波。
俺の身体が浮き上がり、虚空に投げ出される。
「ごはっ!」
が、辛うじて目前のリニアガンの砲身に激突して助かった。
あっぶね、ナメてたぜ。
背筋に冷たいものを感じながら、しかし俺は背後を振り返って口元を歪めた。
目論見通り、さすがのリィアーマーでも、超光速の飛翔物体を防ぐことは出来なかった様だ。
タケミナカタが激突したその場所は、まるでクレーターのように、大きく深く抉り取られていた。その一部は武則天の巨体を貫通し、無数の破片が地上にまで穴を穿っている。
(あ〜あ〜……貴重な超光速加速デバイスが、たった数分で粉々にぃ……)
脳裏で、ウズメの嘆きが響いた。
泣くなかーちゃん。俺に預けた時点で、こうなることは分かってただろ?
「は、コメントもナシかよ。さすがにビビったみてーだな!」
俺は、リーユンの中にいる『ヤツ』に向けて言い放つ。
これで状況を一つ覆した。あとは俺がクレーター内部へ乗り込んでハッキングを強行するだけだ。好き勝手やってくれたツケを支払わせてやる。