魔物達の学園都市
そんな事を思ったが、なんだか良く分からない。でも一つだけ確実に言える事はある。
俺、マジ死にそうッス。ダメージハンパないよ? マジで。一撃一撃が、メッチャ重いんだよ。こりゃもう、地下都市に舞い戻って、医療ポッドに三日三晩コースかナ〜……。
取り敢えず、吹っ飛ばされた先で受身を取ろう、と、そう思った時。
え?
そこには、俺の感覚を遥かに超えたスピードで、先回りしたその人の顔が在った。
受身を取ることも出来ず、俺は首を鷲掴みにされて、高々と掲げられた。
まさか……人間じゃ……ない……?
このとき既に、そう考えたのは遅すぎたのかも知れない。なにせ目の前の華奢な存在は、俺の身体をたった左腕一本で吊っているのだ。
「あの……お、れ……なん、か……気にさわ、る、ような事……した……?」
苦しい息の中で、そう問うてみる。
「なんか……て、この……ほんまに……」
眼下にある、俺を見上げる秀麗な顔。怒りのためか、その顔が真紅に染まり、その双眸もまた血の色に染まっていく。
そして、優美なその唇が開かれたとき、俺は先程の推察が当たっていた事を悟った。
「……血ぃ吸うたろかぁ?」
俺を縛める左手が、まるでその唇に俺を捧げるかのように降りていく。
目一杯に開かれた唇の奥。そこには、上下二対の鋭い牙が在った。
「ん……」
「あ、ぐ……」
吐息がかかったと思った直後、俺は思わず呻いた。
ぶつり、と、不快な感触が俺の首筋の皮膚を貫く。
コクリ……。
コクリ……。
コクリ……。
耳に届く、穏やかに喉を鳴らす音。
首筋から、俺の『カケラ』が吸い出され、色白の喉の奥に滑り落ちていく。
だが、そんな感慨を抱いたときには、俺は首筋の痛みを感じなくなっていた。
いや、不快な感覚は一切感じない。むしろ、奇妙な心地良ささえも感じ始めていたのだ。
意識が、遠のいていく。
やがて、俺の意識が闇に落ちる頃――
「お母さん! もうやめて! 死んじゃうよその人っ!」
――そんな声が、聞こえた気がした。