魔物達の学園都市
◆ ◆ ◆
ムチウチ全治三週間。
そう診断され、俺は学校の保健室――というよりも、医務室とさえ言える医療施設でベッドに寝かされていた。
「よう、おめー、よく生きてたな?」
不意に耳に届いた声に促され、右隣に視線を送ると、隣のベッドには、同様にミノが寝かされている。
「いや、マジで死ぬかと思った。オマエ、春菜先生に何注射されたんだよ?」
言いたいことは山ほどあるが、ひとまず俺は、ミノにそんな事を訊いてみた。
「まぁ、聞かぬが花、ってヤツだぜ。……しばらく隔離されるらしいけどな」
「……うん、分かった。聞かないでおく。つか、聞きたくない」
ミノの言葉に、俺は即答した。そして強く思うのだ。
しばらく、牛丼は食う気にならないだろう、と。
「で、なにオマエ、赤色見ると暴走するワケ?」
俺は先刻見たミノの様子を思い出しながら、そう訊いてみる。
サングラスが砕け、ウメハラが流した血を直に見てコイツは暴走した。
あの状況から、どう考えてもそうとしか思えない。
「シラナカッタんでゲスか。ケケケケッ。ミノオはアカいろニガテなんでゲスよ」
左隣のベッドで包帯だらけになっているウメハラの言葉に、俺は思わずその一言を口走る。
「……まるっきり牛じゃねぇかよ……」
「ほっとけバカヤロー……」
男泣きに泣きながら、ミノがそう返してくる。
うん、多分、これで色々ミノの評価が下がるんだろうね、ご愁傷さま!
とか、そんな事を思いつつ、俺は容赦ない春菜先生の行動に、ありがたみと同時に恐怖を覚えていた。
俺の記憶にある春菜先生は、終始いつもの笑顔だったような気がするんだ、確か。