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魔物達の学園都市

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    ◆ ◆ ◆

 ザン! と靴音をたて、二クラスの男子生徒は二チームに別れて対峙した。
 午後一の体育の授業内容。それは紳士のスポルツ『ラグビー』だそうだ。
 とはいえそれは男子だけの話で、女子はそれを眺めてのチアリーディングとか。
 うん、それはいい。女の子たちの声援を受けながらの授業ってのも悪くないと思うんだ。
 ……まぁ、リーユンはさっきの一件以来、視線を送っても目を合わせてくれないんだけども。
 その一方、アーウェルはと言えば、グラウンドの外周付近で、猫系獣人の女性体育教師と何やら話し込んでいる。
 ついさっき春菜先生に頬を張られた俺とアーウェルだったが、さすがは吸血鬼。俺の頬はまだ手形が残ってて、じんじん疼いてるっていうのに、ヤツの頬は既に元通りになっている。
 ちなみに、アーウェルの影響力はさすがに大したもののようで、俺達男子を指導する、黒いジャージに身を包んだ骸骨――つか、死神みたいな体育教師に指示をして、授業内容をラグビーにしてしまった。
「いいか〜オマエら〜、今日は〜、この学園に多大な出資をしてくださっている〜、アーウェル・ブルームフィールド伯爵がぁ〜、ご見学にぃ〜、来ていらっしゃる〜」
 カタカタと骨を鳴らし、不思議と間延びした口調で、白骨教師がそんな事を言う。
 つか、声はどこからどうやって出してんだよ?
「……ん〜? オマエかぁ〜、人間のぉ〜、転入生というのはぁ〜」
 不意に、教師の双眸の奥に灯る、赤い光が俺を見据えた。
「は、はぁ、そうスけど……」
 俺は愛想笑いを引きつらせて、そう返答してみる。
「オマエの事はぁ〜、娘のふみから〜、聞いてるぞぉ〜? なかなか〜、やるらしいなぁ〜? 一緒の授業でもぉ〜、大丈夫かぁ〜?」
「あ、まぁ、多分大丈夫なんじゃないスかね?」
 そう適当に返しつつ、俺は傍らの――つか、足元に居るウメハラをつまみ上げた。
――おいウメハラ、ふみって誰だよ?――
 反撃できないように首根っこをつまみ上げ、俺はウメハラの耳元に問いかけを送る。
――ケケッ! シラネーでゲスか? オマエのワリとチカクにスワッテる、ゾンビのアイツでゲス。チナミにゾンビのサイシュウケイタイが、スケルトンでゲスよ――
 ああ、なるほどね――
 その説明で、俺は全てを理解した気がした。
――あの腐女子ちゃんのお父さんかぁ。
 教室であ〜う〜言ってるあの腐った女の子(?)の身内だって言うワケだ。
 まぁ、どうやって繁殖してるの? とか、肉が落ちたらどうやって動くの? とか、そもそもアンデッドで親子関係ってどういう事なの? とか疑問は色々あるが、敢えて訊くまい。
 ちなみに、このお父さんの様子を見る限りでは、肉が落ちた方が知性が向上するようだ。
 ……うん、どういう事よソレ?
「ではぁ〜、始めるぞぉ〜、整列番号〜奇数チームとぉ〜、偶数チームでぇ〜、対戦するぞぉ〜、な〜らべ〜」
 教師の間延びした口調にそろそろイラっとしてきたとき、俺はふとそれに気付いた。
 俺の整列番号は九番、奇数チームだ。
 で、だね。
「ケケッ、オマエとオナじチームなんてイヤんなるでゲス」
 チームメイト、整列番号一番のウメハラが、そんなナメた口を利く。
 つか、それはこっちのセリフだ大バカヤロー!
 で、同じく十一番のデュラはん。
 ガタイは悪くないんだが、うん、俺が視線を投げて、直後にそれを避けてるあたり、十中八九使い物にならん。というか、そもそも常に自分の首を抱えてる時点で、下手にパスしたらボールと首を間違えないかが心配だ。
 その上、隣のクラスの連中はまだよく知らないし、チームワークなんかハナから期待しちゃいない。
 というのに。
「よう、黎九郎。楽しみだなぁ、オマエがどれだけやれんのか、こういうのも悪くねぇ」
 一方で、クラス一の巨漢が敵チームにいるとか。どんなワナなんだよ?
「悪いがな、勝たせてもらうぜ牛野郎。さっき秘密兵器ダウンロードしたかんな。パワーはともかく、スピードじゃ負けやしねぇ」
 ミノのサングラスの奥の瞳を睨みつけながら、俺はそんなハッタリをかましてみる。
 いや、ALSがある以上、まったく根拠のないハッタリでもない。が、人類の叡智がどれだけ魔物に通用するかは未知数だ。その上で、もう一つ懸念もある。
 向こうチーム、獣人系が多いなぁ……。
 俺はスジ目で観察し、思わず生唾を飲み込んだ。
 魔物の中でも獣人は割と人口比の多い血族だそうで、一口に獣人と言っても様々な亜種がいる。
 厳密に言えばミノもまたそのカテゴリらしいし、広義ではハルピュイアとかの鳥系や、羅魅亜みたいな蛇身系も含むんだとか。
 無論、ワーウルフやその他、犬猫系の連中なんかは言うまでもない。細分化しなきゃ、この学園の六割弱くらいが獣人系だと言っても過言じゃないというワケだ。
 で、改めて俺は自分のチームを見てみる。
 まぁ、ウメハラはしょうがないとしても、つか、単純に奇数偶数の整列順なら俺にはどうしようもないワケなんだが、なんでか知らんが、俺のチームはちっちゃい妖精系やアンデッド、はたまたウィル・オー・ウィスプとか、人型ですらないヤツらが多い。
 つか、ウィスプって日本で言うところの人魂みたいなのじゃなかったっけ? 物理干渉能力ないのに、どうやってボール持つんだよ?
 いや、そもそも体育に参加してる意味が分かんねぇし。
 まぁいい。考えたってしょーがねぇ。なるようにしかならん。
「んん〜、ではぁ〜、は〜じめぇ〜!」
 気の抜けるそんな合図とホイッスルで、試合は始まった。
 どうでもいいんだけど、骨のくせに笛吹けるとか、どんだけ器用なんスか先生?
作品名:魔物達の学園都市 作家名:山下しんか