はじめのちょこっと
あれこれと考えるだけの僕は、何ともならないまま休日になるはず・・・と、異変が! いやチャンスが訪れた。
「あの、今度会っていただけませんか?」
なんと・・・彼女のその優しい声が欲の膜に覆われた耳にはうまく届かない。
「え? 今なんと?」(しまった。何を聞き直しているんだ。後悔! 後悔!! 後悔!!!)
でも彼女は、先ほどより頬を赤らめてその口元を動かしてくれた。
「会っていただけませんか?」
(よ、よ、よ、よっしゃー)頭の中で拳をガッツする僕が何人も並んでいる。
「いいですよ。場所や時間は 貴女が決めてくれればいいですよ。あー今夜・・・とか?」
(おいおい、もっと若者らしく、スマートに答えられないのか!!)と僕1がつっこむ。
はにかむ僕2は(だって、よく知ってるだろ? 経験不足。勉強不足。睡眠不足。あー可愛い。なんたって今、目の前に居るよぉ)
そんなうっとり どぎまぎな僕の耳に そよ風のような声が届く。
「私が、決めて宜しいですか。では、明日の土曜日。んー、十一時(am11:00)に駅前のオブジェの前で」
「わかりました」
(すっげー。何という日だ。人生最良の・・・ いやぁ もっと最良の日にするんだ)
僕は、外まわりのついでにATMで札入れ財布を太らせてやった。
(おい、初売りの『大入袋』出身の財布よ、感謝しろー。こんなこと滅多にないぞー)
約束をした後も 僕は帰社してから翌日まで 彼女に近づく輩はいないか気になる。
(彼女をガードしておきたいけど、それではストーカーだな。一発アウト。レッドカードか)