舞~紅と黄金~
週末、時間通りに男は公園に待っていた。
マチコは、息を切らして走ってきた。
地面に広がる落ち葉のカーペットを蹴散らしながら、男の元へと駆けて来た。
「はあ、私、間に合いましたか?」
腕時計を眺め、男は真面目な顔つきでマチコを見た。
「マチコさん、遅刻です」
「えー、すみません」
「初めてのデートに遅れてくるのは、女子の作戦ですか?」
「それは、ないと思いますけど、ごめんなさい」
まだ息の落ち着かないマチコをベンチに腰掛けさせた。
目の前に広場には、赤や黄色、まだ緑のまま落ちた葉が不思議な模様を見せていた。
「昼に来たことがなかったけど、綺麗ですね」
落ち着きかけた呼吸でマチコは話した。
「そうですね。綺麗です。そして貴女も」
「やだ、髪もセットしたのに走ってきたからボサボサでしょ。それに顔だってきっと赤くなってるでしょ。あ、だから見ないでくださいね」
「子どもの頃、この公園に来たことがあって、その時どこかのお兄さんが、あ、ほら僕が見られたあれ・・・あんなふうにしてたんですよ」
「子どもだってすればいいじゃないですか」
「そうですね。してみたんですよ。でも今はこんな邪魔くさいくらい背がありますが、
僕けっこうチビで、してみても舞い上がらないんです。おまけに目に入って大騒ぎ。
医者へ行って眼帯付けられて、苦手な目薬ずっとされて。いい想い出じゃないんですけど。
あまりにも綺麗で。パトロール中にこそっと見たりして。誤解のないように、不審者はないかと見回りはしていますから」
「おまわりさんのいい訳ですか?可笑しい」
マチコの笑いに男も笑った。