Da.sh
「あの時は世話になった。今でも傷が時々引きつることがある」
「面倒なあんたをなぜ助けたのか、俺もお人好しだったんだよな」
「あんたの連れだと分かれば手だしはできねェな。貨物船に乗って、ベトナムでもどこへでも行くんだな。ま、気ィ付けて行ってくれや」
守は勇気を胸に集結させて言った。
「俺の親父を殺したんだろ。自首しろよ」
「お前さんの詐欺、俊のハッキング・・将来を棒に振るか? 10億のことは金丸をうまく言いくるめといてやる。どうだ」
「そろそろ乗船が終わる時間だ。お前ら、もう行け」
「浜崎さん・・お世話掛けました。じゃ、行きます。行くぜ守」
チクショウ、と連発し納得のいかない様子の守の腕をひき、俊介は荷揚げ場へ急いだ。
水元は煙草に火をつけながらふたりを見送ると、浜崎に向き直った。
しばらくの間近況を交換した。
そして、不意に思いついたかのような言い方で、
「いいことを教えておこう。グエン・カオ・タイン、ホー・チエン・ズン、といったかな? 香港マフィアが捜しに来ている。とんでもない秘密を握っているらしくてな。それで日本に逃げてきたそうだが、自分らが死んだことにする身代わりにあのふたりを乗船させて、すでにある計画を実行に移したんだとさ。船にダイナマイトを仕込んだそうだ。痛めつけて本人から聞きだしたから、確かな情報だ」
「ほんとか!」
「6時に爆発するそうだ・・・ほう、いよいよ出航だな、ハッハッハハハハ」
出航の合図が高らかに鳴っているのが聞こえてきた。
水元は足元に捨てたたばこを踏み消し、高笑いを残して駐車場に向かった。
浜崎は債務不履行者を乗組員として何度も斡旋してきたので、港内のことはよく知っていた。
物流センターへと全力で駆けた。
まだ人が残っていることを願いつつ。