Da.sh
夜っぴいてバイクを走らせるばかりが暴走族ではない。
もっと楽しいことをしようと企画を立て、周辺のグループを統率していったのが浜崎明良だった。
恵まれた体格と腕力を有していただけではない。№2にいた俊介の存在も大きかった。知恵を絞るのが俊介の役割だった。小柄で腕力は貧弱だったが、器用にたちまわることができた。
ギャングスターのメンバーが中心となり、ファイティングショーを渋谷にある喫茶バーを不定期に借り受けて開催した。もちろん、賭け、である。
口コミでいつも超満員の盛況だった。
出演者は参加料を払うが、優勝すれば集まった掛け金の50%が入る仕掛けだ。しかも女性にモテモテとなれる。
飲み物も盛大に売れていった。
そうすると組員の下っ端だった水元は、みかじめ料請求に現れるようになった。が、浜崎は決して屈することはない。
数億もの金を貯め込んでいるという噂だった。それを仲間に公平に分配していたから、仲間の信頼は厚かった。
そんなある日、
地元に基盤を置く稲山会と家吉会、そして関西から進出してきた山田組との間で縄張りをめぐる争いがエスカレートし、ついにいわゆる、三つ巴のシマ戦争が始まった。
水元は日本刀で背中を切りつけられ、浜崎がたむろしていた喫茶バーに命からがら、よろけながら逃げ込んだ。店に入ると椅子に倒れかかってそのまま意識を失ったが、気が付いた時にはそこで匿われ、素人による傷の荒療治を受けていた。
警察の手にも敵対する組の手にもかかることがなかった。
8年前のことである。