Da.sh
ヒュッ・・・ヒュッ、ヒュッ
空気を切り裂く音が聞こえた瞬間、水元は拳銃を落とした。石ころが転がる。
俊介はすかさずバッグを空中高く放り投げ、尻を地面に着けるようにして左足を折り曲げて右足を伸ばし、拳銃を蹴とばした。
チンピラはナイフを落とした。彼らは手を押さえている。
俊介は拳銃を蹴とばした姿勢から左手を地面につけ、それを軸にして体を回転させ、両足を地面に着けると同時に上体を立ち上げた時には、ふたつのナイフを拾い上げていた。
守はあんぐりと口を開けて見ていた。
一連の動きは滑らかで美しかった。
「シュン、相変わらずの素晴らしいダンスだ。よう、水元さん、お久です」
浜崎は親しみを示すように口元をほころばせて姿を見せ、そばに落ちている俊介のバッグを拾い上げた。
不覚をとった水元は口をゆがめて凝視している。
「や、ですよ。忘れっちまいましたか。それともオレが変わっちまったかな」
斜交い(はすかい)に視線を送っていた水元は、空中にそらすと再び浜崎に焦点を合わせた。
「渋谷一帯を牛耳ってたギャングスターの明良か!?」
「水元さん、すっかり元気になられたんですね」
「明良が後ろ盾か。これはまいったな、ハハハハハ。オイお前ら、先に帰っていいぞ、俺の知り合いだ」
「命の恩人、と言ってもらいたいですね」
浜崎はバッグを肩にかけ、片手をズボンに突っ込んだままそばまでやって来た。
俊介はズボンの汚れを払っている。
守は状況が分からずに、交互に顔を向けるばかり。
「見事な踊りを披露してくれたのは、ナンバー2の俊か」
「昔ほどのキレは、もう見せられないな」