Da.sh
4月19日、午後4時。
横浜港山下ふ頭。
守と俊介は車から降り、身の回り品のみが入ったバッグを肩にかけて停泊している貨物船へと向かった。浜崎は車を置きに行っている。
倉庫群の間を歩いていると、目つきの鋭い男が現れた。笑っている。
後ろからも足音が。
振り向くと、いかにもチンピラ風情の男が二人。ズボンのポケットに両手を突っ込み肩を怒らせ、口を半ば開いて近づいてきた。
やあ、とスーツのズボンに片手を突っ込んで話しかけてきた男に、向き直った。
「大賀渉。いや、渡辺守、というべきかな。それとホー・チエン・ズン。本名はなんというのかな」
「な、なぜ・・・分かった」
顔の筋肉はすべてひきつっていたが、穏やかな落ち着いた声を出すことができた、と守は感じた。
――落ち着くんだ
と心の中で何度も唱える。
「なにビビってんだ。声が出てないぞ。レンタカーを調べた。“わ”ナンバーはレンタカーだ。すぐに教えてくれたさ。フン正直なんだな、君たちは。ホー・チエン・ズンというのはベトナム人の名前かな? それと横浜港で乗り捨て。ハハハハ、上に馬鹿が付くほどだ」
「それで、俺たちに何の用だ」
俊介は守よりも落ち着いた口調だ。まるで、慣れている。
「金丸金属から受け取った金は、どうしたィ!?」
「そ、そんなことより、ぼ、僕が渡辺守、だと、ど、どうして知ってるんだ」
「渡辺・・・君の親父さん、自殺したんだよな。勘と正義感が強すぎたんだよ。当時の経理部長、今の社長はそれが鬱陶しくなって、その時にちょっと手を貸すようにと俺は頼まれた」