Da.sh
15日午後3時50分。
木村俊介が運転するレンタカーのバンで金丸金属工業の玄関口に乗り付けた。俊介を車に残し、守は2階の応接室に通されるとしばらく待たされた。
金丸社長は、キャリーを引っ張る経理部の男を伴って現れた。
キャリーのふたを開け、1万円札の束をいくつか取り出し、束の数量を確認させた。
俊介が偽造した受取書と交換する。
「確かに受け取りました。これは領収書です。大臣はこの事業に大変な意欲を持っていまして、引き受けていただけたことを大変喜んでいました。ありがとうございます。大臣があらためてお礼の電話を入れると思います。必ず成功させますよ、ご安心ください」
「追加が必要となれば、いつでも申し出ていただいて構いません。よろしく頼みましたぞ。大臣にもお伝えください」
キャリーをひいてエレベーターから降りた守は、まっすぐに車へ向かった。ロビーで目つきの鋭い男が見ていることには気づかない。
守がキャリーを車の後ろに積み、助手席に乗り込んで走り去ると、男は外に出てきて近くに止まっていた車に合図を送った。
車はバンの後を追いかけた。
バンを守るつもりで待機していた浜崎は、その様子を読み取った。
携帯を取り出した。
「後を付けられてるぞ。どこかで撒け。その後は横浜の例の倉庫だ」
『分かった』
「後ろに暴力団が付いているようだ。見覚えがある。目的は分からんが、ウソを見抜かれたのかもしれんな」
『暴力団? ウソだろ。嫌だぜそんなの』
守の声は1オクターブ上がり、裏返っていた。
「ま、運を天に任せるんだな。幸運を祈る」